コールセンターの通話録音の法的ルールと録音の目的
コールセンターにおける問い合わせの分析やオペレーターへの教育に「通話録音」は大きな効果を持ちます。よく「この通話はサービス向上のために録音させていただいております」という通話ガイダンスを聞いたことがある方も多いのではないでしょうか。
しかし「通話録音」は非常に個人的な情報のやり取りが録音されているデータです。そのような情報や記録を利用することに、法的な問題等はないのでしょうか。
そこで、今回は、通話録音が使用される録音の目的や法的なルールの詳細についてご紹介いたします。
コールセンターで通話録音を行う目的は?
コールセンターで通話録音を行う目的は、複数のメリットがあるためです。主に「オペレーターの教育・育成」や「トラブル発生時の通話内容の確認」等、様々な用途に使われます。
ここでは、コールセンターでの通話録音を行う目的についてご紹介いたします。
1.オペレーターの教育・育成
新人のオペレーター、または経験があってもスキルに伸び悩んでいるオペレーターは「話し方」に問題があることが多くあります。例えば「早口過ぎて聞きづらくなっている」「声のトーンが暗く、聞き取れない」「話し方が高圧的である」等、本人には気づいていないことも多くあります。
また、口癖で「あの」「えっと」といった相手を不愉快にさせがちなワードや、社内で決められている「NGワード」を無意識に発してしまっているオペレーターもいます。
このような問題は、通話録音を聞くことですぐに発見・改善につなげることができます。
また、直接オペレーター本人に聞いてもらうことで、自分の声や話し方の印象を知ってもらうきっかけにもなります。
さらに、成績の良いオペレーターの通話を確認することにより、どのような話し方やトークの流れを作っていけば、お客様に良い印象を与えられるのか、お客様に響くのかを分析する材料にもなります。
2.お客様とのトラブル発生時、通話内容を確認できる
電話対応では、些細な聞き間違えや捉え方の違い、双方の言い間違い等が主な原因で、お客様とオペレーター間にトラブルが起きることがあります。
その際、通話を録音しておくことにより、お客様とオペレーターのどちらの非があったのかすぐに判断できます。
また、勘違いや聞き間違い等、お客様が原因であった場合には、通話録音を聞いてもらうことで、お客様に非があったことを認めてもらいやすくなります。
反対に、この通話記録がないと、お客様に非があっても「証拠がない」等と言われてなかなか納得してもらえません。
トラブルにできるだけ早く対処し、通常の業務に集中するためにも、日々の電話対応の録音やデータの保存は欠かせない要素であるといえるでしょう。
3.クレーマーの抑制と対策
コールセンターの顧客の中には、オペレーターに一切の落ち度がなくても、悪意を持って苦情の電話を入れる、いわゆる「クレーマー」が存在します。特に一般消費者との通話対応を行っているコールセンターに多く、オペレーターにとって精神的なストレスになる大きな要因となっています。
このようなクレーマーによる営業妨害は、通話の始めに自動音声で「この会話は対応品質向上のため録音されています」といった内容を入れることで軽減が可能となっています。
また、クレーマーと裁判や警察問題に発展した場合には、通話記録を証拠として提出することができるのも、コールセンターにとっての大きなメリットです。
違法?合法?通話録音に関する疑問アレコレ
そもそも、通話録音そのものが「違法ではないのか」という疑問が出てくる方も多いでしょう。個人情報の塊でもある通話録音を、そのまま録音して保管しておくことは、法律に抵触するのではと考える方もいらっしゃるようです。
そこで、ここでは、通話録音が違法なのか合法なのか、その詳細についてわかりやすくご紹介いたします。
通話録音自体に違法性はない
結論からお伝えすると、通話録音を取得することそのものに違法性はありません。通話録音に対して盗聴のイメージを持ち、不安がられる方も多くいらっしゃいますが、業務利用の目的で通話録音をすることに問題はありません。
実は、そもそも「盗聴」自体も犯罪ではありません。盗聴器を仕掛ける際に部屋に不法侵入する等の行為が「住居侵入罪」にあたり、こちらは犯罪に該当します。
その分、通話録音が裁判において、有効な証拠となるかどうかは一概には言えないのも現状としてあります。
当事者同士の「言った・言わない」のトラブル回避手段として、通話録音は有効ですが、法的な証拠として認められるかどうかは、最終的には裁判所の判断に委ねられることになります。
無断で通話録音した場合は?
通話相手に告知を行わず、無断で通話内容を録音(秘密録音)した場合でも、録音そのものに法律上の問題はないと考えられています。会話は「自らの意思で情報を開示している」と判断されるため、それを録音したからといって、プライバシーの侵害等には当たらないといった解釈が行われることが多いようです。
ただし、通話録音のデータを悪用する・改ざんする等の場合は、何らかの法律に抵触する可能性があるため、録音データそのものの取り扱いには注意が必要となります。
通話録音を行う場合の注意点について解説
上記では通話録音が合法か、違法かについて詳しくご紹介してきました。ここからは、実際に通話録音を行う場合の注意点についてご紹介いたします。
必ず「事前告知」をする
コールセンターでお客様と直接対話する際には「会社の顔」として誠実な対応が求められます。顧客満足度の低下につながることがないよう、通話録音について着信時に自動音声でガイダンスを流す、あらかじめWebサイトに提示するといった「事前告知」が必須です。
また、日本コールセンター協会が公開している「コールセンター業務倫理ガイドライン」では、通話録音を取得し利用する場合には「収集する情報の利用目的をできる限り具体的に特定するとともに、 できる限り広く公表するか、または本人に通知しなければならない」としています。
参照:一般社団法人コールセンター協会「コールセンター業務倫理ガイドライン」
このガイドラインはほとんどの企業で実施されていますが、通話録音の実施・保存をする際には、ガイドラインを参考にして「この通話はサービス向上のために録音させていただいております」等の事前告知をすることで、クレームの抑止の他、恐喝や恫喝等もある一定予防する効果が期待できます。
通話録音は「個人情報」として、適切に管理を行う
通話録音のデータは内容から個人を特定できるものであれば「個人情報」に該当する可能性があり、個人情報保護法に準じた取り扱いが必要となります。
この法律では、個人情報に該当する情報を扱う者(個人情報取扱事業者)に対して、以下のことを義務づけています。
1.取得理由を明確にし、その範囲内で利用する
2.情報が漏えいしないよう安全に保管・管理する
3.第三者に提供する場合は予め本人から同意を得る
4.本人から開示請求があれば速やかに対応する
通話録音を取得すること自体は違法ではなくても、個人情報保護法に則った安全管理は必要不可欠です。
国外では違法となる可能性がある点に注意
上記でご紹介してきたように、日本では通話記録を取ることそのものに違法性はありませんが、国によっては当事者同士の同意を法律で義務づけている場合があります。世界に拠点がある、あるいは国外のお客様とのやり取りがある場合には弁護士に相談しておく等、事前の対策を行っておくと安心です。
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